2008年08月19日

滋賀会館・原恵一特集上映ルポ

お盆はみなさん、どう過ごされましたか?
私のほうは、お伝えしましたとおり遠野のほうに行ってまいりました。市内をレンタサイクルでまわってたっぷり観光してきました。非常に充実した旅行でした。こちらについては、また後日詳しくお伝えしたいと思います。

さて17日は、滋賀会館にて行なわれた原恵一監督の特集上映に行ってきました。16日にはトークショーが行なわれましたが、残念ながら私は行けませんでした。ただ、二日目の17日も原監督の舞台挨拶が行われるとのことなので、早起きして滋賀県大津市にある滋賀会館シネマホールに来ました。

滋賀会館


上映が行なわれた滋賀会館は、1954年(昭和29年)に開館した滋賀県の文化施設で、開館当時は「文化の殿堂」として全国から注目され、以降映画や演劇、コンサートなど多くのイベントが催され、滋賀県の文化芸術活動の場として、地元住民に長く親しまれた文化施設だそうです。しかし、施設の老朽化が進んだことなどもあって、今年9月をもって1F大ホールは閉鎖。再来年度には、この滋賀会館そのものも廃止されるそうです。今回の原監督特集上映のイベントは、大ホールのお別れイベントの一環として行なわれたものだそうです。

滋賀会館では、宮崎駿・高畑勲監督が手がけた『パンタコパンダ』も上映されてました。そういうわけで、看板には宮崎・高畑監督の『パンタコパンダ』と原監督の『河童のクゥ』が同列に並んでいました!!
まさに夢の共演ですwww

パンダコパンダとクゥ


しかし、、、、
今回の客の入りですが、どうも宣伝期間が短かったせいもあってか、だいたい2割ほどしか集まっていませんでした・・・orz
場所や時期の問題もあるでしょうがこれは寂しすぎる・・・。せっかく『星空のダンシングドール』が上映されるというのに・・・。

そんな寂しい中ではありましたが、午前10時から最新作の『河童のクゥと夏休み』が上映されたのち、デビュー作『エスパー魔美 星空のダンシングドール』の上映前に原監督の舞台挨拶が行われました。このイベントを企画したRCSの方と「映画」についてトークが交わされました。

名画座の思い出・・・
最近はレンタルビデオが普及して、すっかり数が減ってしまった名画座。原監督はかつて名画座に通いつめていたそうで、黒澤明や小津安二郎といった日本映画の巨匠の名作も名画座を通じて知ったとのことです。そのときに自分が味わった感動を、うまく自分なりに消化して、観客に同じような感動を味わってもらえる映画を作りたいと思うようになったそうです。

原監督の「映画」観(以下、監督のコメント要約)・・・
最近のアニメや実写映画は「平均点」を求めている。安心感はあるけれど、いびつなシーンがなくなってきて印象に残らなくなっている。作り手が「わかりやすい」ものをどんどん作っていくから、観客も「わかりやすい」ものを求めてしまっているのでは。今まで観てきた映画には、台詞などで説明せずに、観た人の解釈に委ねるというのもあった。あえて描かないほうが逆に身にしみることもある。

外せなかった紗代子の靴落としシーン・・・
2時間以上だと客は観に来ないと言われショックだった。それで最初にカットの候補にされたのが、紗代子が男の靴を落とすシーン。こんなシーンは客にはわからないからと言われたが、ここはどうしても譲れなかった。結局、今の尺に落ち着いたが、こっちは削りたくなかったシーンまで削られ、逆に向こうは2時間以内に収められず、お互い後味が悪かった。


そして、話題はいよいよ『エスパー魔美』に・・・。


エスパー魔美チーフディレクター時代・・・
当時20代の若さでチーフディレクターに。好きにさせてもらえるのかと思いきや、周りからはどんどん抑えこまれて第1話のオンエア前から嫌になった。藤子F作品の中でも完成度が高く、期待されていた作品だった。原作が素晴らしいので、原作の雰囲気そのままに地味にやろうと思っていたのだが、周りからはもっと派手にできないのかと言われた。
あることで、すごくモメて電話を切ったら、周りから「髪の毛逆立っているよ」と言われて鏡を見たら本当に逆立っていた。「怒髪天を衝く」は本当だったと実感。


簡単にトークをしたのち、『星空のダンシングドール』上映後に再び登場されるということなので、原監督は一旦退場。いよいよ、このイベントのメインと言っていい『ダンシングドール』がスクリーンに映し出されました・・・。


『ダンシングドール』はレンタルVHSで観たことありましたが、やっぱり劇場のスクリーンで観ると感動が増しますね。最初からもう興奮しっぱなしで、楽しく観ることができました。
ラストシーンは涙出そうになりました。


上映後、再び原監督らが登場し、『ダンシングドール』の裏話について語ってくださいました。さすがに20年前の作品ということもあって、原監督も忘れているところもありましたが、それでも興味深い話を聞くことができました。


ストーリーについて・・・
最初はオリジナルストーリーで行くはずだったが、結局どういうわけか、原作に人形劇団の話があったのでそれを基に作っていくことになった。浄瑠璃が出てきたが、脚本家の人がそっちに造詣があったので入れたんだと思う。


キャストについて・・・
今観て思い出したけど、山寺宏一さんが「男A」で出ていた(笑)
チンピラの痩せ型のほう。
そのころから器用な人だったので、魔美にはいろんな役で出演していた。


今は押しも押されぬ大人気声優の山寺さんですが、『魔美』に出演したことで芸を磨いていったかもしれませんね(笑)

ちなみに、めぐみちゃん(CV.小山茉美)の父親を演じていたのは、『積木くずし』で知られる穂積隆信さん。キャスティングしたのは録音監督でしたが、『積木くずし』と同じく父娘の溝を描いているだけに、「いいのかよ!?」って原監督は思ったそうです。(こっちのほうはハッピーエンドですが。)


子供たちの反応・・・
『ドラえもん』の同時上映作でオマケみたいなものだったので、あまり観客の子供を意識しないで作ってしまった。浄瑠璃とかお酒とか出すあたり明らかに大人向け。映画館に行って確かめたけど、子供たちはざわつき出して、「つまんないから外出てる」と言われてショックだった。子供向けを作りたいと思ってこの業界に入ったわけではなかったが、それ以来子供が楽しんでもらえる映画作りを意識するようになって、のちの『クレヨンしんちゃん』で大いに役立った。

当時の世相・・・
魔美がゴミ捨て場で人形を探したあとで、夕焼けを眺めてるところは実はお台場。当時は丸太やコンテナがあるぐらいでほとんど何もなかった。ここにも東京タワーが出てきているあたり、そのころから意識していたようだ。自分の記号になっちゃってる。当時のライトアップは地味だった。
東京駅のホームにあったタバコの広告のコピー「この美味さ、世界一」は今では絶対に使えない。

演出について・・・
瀬戸内海の波がオーバーラップして過去の回想にうつるシーンは、本当はもう少し時間をかけてじわじわ浮かびあがるようにしたかったが、当時はデジタルではなく、特殊効果(以下、特効)の人が一枚一枚エアブラシで描いていたので、そこまで枚数はかけられなかった。特効からは「なぜこんなことを・・・」と嫌がられた。
最近はカメラワークをあまりつかわないが、当時はよく動かしていた。


『星空のダンシングドール』の裏話が語られたあとは『オトナ帝国』『戦国大合戦』についても触れられました。


オトナ帝国・戦国大合戦・・・
オトナ帝国の試写会で観た重役が「こんな不愉快な映画観たことない」。戦国大合戦では重要人物が死ぬことに反対する声も。原作者の臼井さんがOKしてくれた。
しんちゃんの映画はかなり短い期間で作られるので、絵コンテを直せと言われても、作画の作業も始まってるからできない。そこをうまく使って、あれやこれや言われてもそのまま通せた。


最後に『河童のクゥ』についてのニュースも・・・。

なんと来月からフランスでも上映されることが決まったそうです。原監督もつい先日、松竹の方から連絡をいただいて知ったそうです。フランス国内25館で上映とのこと。原監督はフランス人に河童わかるのかと苦笑してましたw

それと、『戦国大合戦』についてにも何かしらのお知らせがあったっぽかったですが、今はまだ話せないとのことです。うーん、ちょっと気になりますね。

そして気になる次回作の方は、ぼちぼち手をつけているそうで、5年待たせることはないとのこと。次はどんな作品を作ってくれるのか、続報を心待ちにしてます。


トークショー終了後、ロビーにて原監督がサインをしてくれるというので、今回サイン用にパンフを買って原監督にサインをしていただきました。

サインを描いていただいてるときに、『エスパー魔美』や『ドラえもん』が好きだということと、原監督にはもう一度藤子アニメをやってほしいということを話しました。「藤子作品を一番上手く映画にできるのは原監督ぐらいです」と言ったら、「いやあ、上手いお世辞を・・・」みたいなことを言われてしまいました(笑)
いや、監督、私は本気でそう思ってますから。
「機会があれば」ということでしたので、原監督お待ちしてます。

原監督のサイン


他にも遠野へ行ったことや監督の応援ブログをやっていることも話そうかと思いましたが、さすがに恥ずかしいのと、順番を待っている人がいたので、軽く最後に「次回作も楽しみにしております」と言って原監督と握手しました。
原監督、本日は素晴らしいひとときを本当にありがとうございました。


そのあとは、『オトナ帝国』『戦国大合戦』を鑑賞して特集上映は終了しました。


今回は観客が少なかったのが残念でしたが、『星空のダンシングドール』をスクリーンで観ることができて、原監督とお話もできて本当に楽しかったイベントでした。
『ダンシングドール』はまさに原監督の原点とも言うべき作品なので、機会があればもう一度やっていただきたいですね。そして一日も早く、DVDが発売されることを強く願ってます。

改めて原恵一監督、そしてRCSさん、素敵なひとときをありがとうございました。

チラシ
今回の特集上映のチラシ
posted by 奈良の忠臣蔵 at 00:00| Comment(7) | TrackBack(0) | イベント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今回の上映を企画・実行したRCSのスタッフの者です。当日は、ご来場ありがとうございました

すでにご存知かもしれませんが、来月のフランス公開用のポスターがアップされているのを見つけたので、以下にアドレスを記しておきます
http://www.ecranlarge.com/movie_image-view-12963-258412-movie.php

オフィシャルサイトはこちら
http://www.coo-lefilm.com/
Posted by viewboo at 2008年08月21日 21:07
>viewbooさん
こちらこそ素敵なイベントを開いていただき有難うございました。

フランス版のオフィシャルサイトがあったんですね!!
これは全く知りませんでした。
サイトの雰囲気は日本版と似てますね。
情報ありがとうございました。
Posted by 奈良の忠臣蔵 at 2008年08月25日 01:07
16日の分のレポートをすると言っていた者ですが
奈良の忠臣蔵さんのレポートを読むと、ほぼ同じような内容で
あまり付け足す事がありませんでした。
やや記憶が遠くなってしまっていますが、、、書かれてない事だけ少し。。

トークショウは、RCSの方と原監督、ミルクマン斉藤さん、浅尾典彦さんの四人で行われました。
宣伝期間が短かったという事で、やはりお客の数は少なめでしたが、熱心に耳を傾け聞き入る方ばかりで、何となくあったかいムードが全体に漂っていたように思います。
最初に河童のクゥを初めて見た人、というアンケートがあり2〜3割の方が初めてだったように思います。


【クレヨンしんちゃんについて】

スペインで大人帝国が劇場公開された時に観客に混ざって一緒に見た。
内容は何度も見てるので、映画より客の反応を観察していた。
観客の数は少なかったが、孫を連れたおじいさんが映画を見て涙を拭っているのを見て「よし」と嬉しくなった。おじいさんに向けて拍手を送りたくなった(会場笑)


【星空のダンシングドールについて】

浅尾典彦さんが、マミの映画のビデオパッケージか何かを持っていて、それを見せていました。監督は「すごいですね、僕ですら持ってないですよコレ」と言っていました。

デパートの場内アナウンスで【田無からお越しの原さま」というアナウンスを入れている。田無はシンエイ動画のある場所。

人形劇につてはきちっと取材をした。(ミルクマン斉藤氏が「あれ、劇団は絶対取材してますよねえ、すごい雰囲気出てますもん。あの手の動かし方とか、狭いところで体を曲げる感じとか、取材してないとああは描けないですよ」というような発言)

特急列車も上野駅にちゃんと取材に行っている。
電車の中に乗り込んで車内の写真を撮って、発車ベルが鳴ると慌てて飛び出した。


【河童のクゥについて】

子供達の声優を全部本物の子供でやったというのが冒険だった。

子供達は最初声優が当たり前にこなすことを経験が無い為全くできない(知らない)という状態で「うわあ、ここから始めるのか〜」と頭が真っ白になって焦った。
しかし、子供達は伝えればきちんと応えてくれて、どんどん良くなっていった。
信用して取り組めば、ちゃんと伝わる、できるんだと思った。

子供同士は初日からめちゃくちゃ仲がよくすごく騒いで元気だった。
自分だけが先を思いやって暗くなっていた。スタジオに行く途中はいつも暗い気持ちで「オレはこんなに暗いのに、あいつらだけ何であんな元気なんだ」と思ったが、今となっては笑い話であり良い思い出。子供達は本当によく応え、よい演技をしてくれた。もっとテレビや舞台でも、声優の子供達を紹介したかった。

○○さん(名前聞き取れず)に指摘されてこの間気付いたのだが、河童の絵コンテは映画の絵コンテとしては(もしかしたらアニメ映画の絵コンテとしてかも?)史上最長なんじゃないかと言われた。これだけ長い絵コンテは他に無いと。


【次回作について】

次回作は映画。
もしかしたら、もっと更に地味かもしれません、、、と言っておられました。



以上、その他の事はもう切れ切れで思い出せなくなってきました(汗)
また、奈良の忠臣蔵さんのレポ内容と被っている部分もありました。
Posted by もこもこ at 2008年08月27日 22:20
追記:マミのヌードシーンについて

ミルクマン、浅尾両氏が「マミといえばヌードシーンな訳ですが、この映画にはヌードシーンは出てこないです。監督のこだわりがあったんですか?」

原監督「いや、特に何で出さないことになったのか、どうだったあか記憶にない」
「マミはテレビでも別に毎回ヌードになってる訳ではないんですよね。何回かある程度で。でもインパクトのあるシーンだから、みんな毎回脱ぐと思ったりしてるけど、そんな脱いでないですよ」


以上、こんな感じでした。
Posted by もこもこ at 2008年08月27日 22:25
>もこもこさん
ご報告ありがとうございます。これだけでも本当に十分な内容です。
浅尾さん、魔美のビデオパッケージを持ってきてたんですか。うわあ、これはちょっと見たかった・・・。

次回作は更に地味かも・・・ですかw
どんなのを持ってくるのか予想がつきませんね。楽しみです。
Posted by 奈良の忠臣蔵 at 2008年08月28日 01:05
どうも始めまして。舞台で司会をさせて頂いたRCSの佐藤と申します。
奈良の忠臣蔵さん、もこもこさん、あと私のブログにコメント頂いたかまねこさんとコチラ原恵一監督を応援するブログをご覧のご参加頂いた全ての皆さま。どうも遠方からのご来場、本当にありがとうございました。 今ごろカキコミを入れて申し訳ないです。

今月はいよいよ『河童のクゥと夏休み』が欧州・フランスでも公開されると云うファンにはとっても嬉しい月ですね。2007年のロードショー時には、同時期にネズミがフランスで料理を作る某アニメが公開され、金にモノを言わせる大物量宣伝で圧倒されてしまった悔しい結果があるので、ぜひとも日本が誇る河童のリベンジ、いや河童の逆襲で巴里を席巻して欲しいです!
あと実は、原監督はこの大津・滋賀会館ご来館の際に、京都の二つの大学が挨拶に来られましたので,いずれ講演等での京都再訪問が実現しそうですよ。
こういった営業チャンスを生み出せる「場所」と「企画」の大切さを、本当に分ってくれる人が行政にこそ欲しいものですが、当面の予算カットしか眼中には無いようで残念です。
今週ちょうど大阪府知事さんが、「職員の働きぶりの悪さを隠し撮りで証明」して施設廃止を確定に持ち込もうという大胆な手法に驚かされた処ですが、滋賀会館はそんな対象以前の問題物件と考えられているようです。
とにかく大事な事は、本当に良質なるモノを、素晴らしい作品や作家を磨き上げて光り輝かせること。その確かな輝きを伝え続けることから、評価は経営にも反映して行くのだと思います。
こちらのような素晴らしいブログの様に。
たとえ隠し撮りされても「しっかり努力は続けます」よ。
「河童シルブゥプレ!」
Posted by RCS エス at 2008年09月07日 13:44
RCSの佐藤さん
こちらこそわざわざコメントを頂きまして誠にありがとうございます。

>あと実は、原監督はこの大津・滋賀会館ご来館の際に、京都の二つの大学が挨拶に来られましたので,いずれ講演等での京都再訪問が実現しそうですよ。

そうなのですか!!
貴重な情報ありがとうございます。これから学園祭シーズンに入りますから、もしかしたら学園祭で原監督のイベントが行なわれるかもしれませんね。楽しみです。

私も本当に良いものは、後世に残していくべきだと思ってますし、たとえ今の時代に評価されなくても後になって再評価されることだってあるのですから、そのための取り組みはすべきだと思ってます。

それだけに国際児童文学館やこの滋賀会館の廃止については心苦しさを感じています。もちろん財政難という理由は十分理解できるのですが、そのために先代の記録や伝統を簡単に捨ててしまっていいものなのか。それは現代を生きる私たちだけでなく、将来生まれてくるであろう未来人たちの財産でもあると思います。

どうしても「文化」というのは優先順位が低くなりがちなので、なかなか理解されにくいのが現状ですが、これを機にもっと「文化」について多くの人たちに理解を深めてもらいたいものです。自分もまた「文化」についてもっと理解を深めなければならないと思います。

そうした努力を続けておられるRCSさんには本当に頭が下がります。これからも活動頑張ってください。応援します。
Posted by 奈良の忠臣蔵 at 2008年09月08日 00:56
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