2015年05月02日

ロフトプラスワンウエスト『百日紅』公開記念原恵一監督トークショー(その2)

ロフトプラスワンウエスト『百日紅』公開記念原恵一監督トークショー(その1)
前回からの続きです。

後半は、観客からの質問を交えつつ、原監督のこれまでの仕事についてを中心に語られました。この日寄せられた質問には、メディアではなかなか聞かれない質問がどんどん飛び出して結構面白かったです。中には「ジブリの制作部門解体についてどう思うか」とか「ナウシカの実写化を某監督がやりたがっているみたいだが、それについてどう思うか」などといった、原監督に聞いてどうするのかとツッコミたくなる質問まで(笑)
ちなみにジブリの制作部門解体について原監督は「知るか(笑)。後継をなかなか育てないからだ。」とやや投げやりに回答していました(笑)

ここからは興味深いと思ったお話を中心にまとめていきます。

※以下、原監督の発言内容は筆者が要約してまとめたものになります。実際の発言内容とは異なる部分もあるかと思いますので、あらかじめご了承ください。

■実写をまたやる予定はあるのか。
今のところない。(『はじまりのみち』を作ったとき)松竹さんからは、またやりましょうとは言われたけど、松竹さんからも何も話は来ていない。何やってるのかと言いたい(笑)

実写は(撮影のため)早起きしなくちゃならないからそれが辛い。
今回は昼過ぎまで寝てそこから出社(笑)

若い頃、シンエイ動画にいた当時は絵コンテを描くのが楽しくて、家に帰っても酒を飲みながら描くことがあった。それぐらい体力的には余裕があった。

■『はじまりのみち』を撮ったときのエピソード
撮影現場で、当初の予定ではもうワンシーン撮る予定が、カメラマンがこれから雨が降るから中止したほうがいいと言って、早くスケジュールを消化したいプロデューサーと言い争いに。
それで、監督である自分に「監督どうしましょうか?」とジャッジを求められて困惑。
結局、自分の判断で撮影を中止したが、撮影からの帰りに、カメラマンの言うとおり雨が降って、自分の判断が正しかったとホッとした(笑)

■アニメと実写の違い
実写は瞬発力が試されるところが大きい。
何か言われたらすぐに判断するところが求められていると思う。
実写ではリアルタイムに作品が出来上がっていくところを目の当たりにしたので、アニメの現場に戻ってきたときは、まためんどくさいことをしなきゃならないのかとウンザリした(笑)

■また実写を撮るとして撮ってみたいと思う俳優は?
『はじまりのみち』でも出演してくれた松岡茉優さん。最近活躍が目立ってきて注目している。他には『アオイホノオ』の津田ヒロミ役だった黒島結菜とか。海外の女優ではケイト・ブランシェット

■テレビアニメをやる気はあるのか
体力的にキツイし、毎週締切があるから難しい。以前はとにかく毎週作って納品してしまえばそれで終わりだったけど、最近はビデオ販売もあるから、昔よりも求められるクオリティは上がってきている。そういう意味では以前よりもきつくなっているだろうが、昔よりはテレビでできることは多くなってきているから、表現の可能性は広がっていると思う。

■意識しているライバルはいるのか。
特にいない。みんな勝手にやればって感じ(笑)
というか、多くのクリエイターはみんなそんな感じじゃないかと思う。

■アニメ業界を志した理由
ただなんとなく(笑)
アニメも漫画も好きではあったが、業界で働きたかったというわけではない。本当は美術系の大学に行きたかったが学力不足で行けず、それで専門学校に行こうとなんとなく雑誌を読んでいたら、アニメの専門学校があると知り、興味が湧いて東京デザイナー専門学校に入学した。そこで初めていわゆる「オタク」というものを知った(笑)

それまで宮崎駿さんとか富野由悠季さんの名前は全然知らなくて「誰?」というレベル。あとになって自分も観ていた『アルプスの少女ハイジ』に関わっていたことを知ったが。

■オトナ帝国を作ったときのエピソード
オトナ帝国で自分が印象に残っているシーンは、ケンとチャコが飛び降りようとするのをハトの親子が止めるところ。あのシーンを絵コンテで描いたときには、今までのしんちゃんとは違うものができたと思い、これが受け入れられなかったらしんちゃんをやめてもいいと思った。

オトナ帝国を作るときに大阪の万博記念公園へ行った。今はほとんど公園になってしまったが、子供の頃に行った大阪万博の記憶が蘇ってきて、何か込み上げるものがあった。万博公園近くのホテルに泊まって、そこから見える太陽の塔が印象深く見え、翌朝に記念公園を歩き回って、そのあとに食べた自由軒のカレーが美味しかったのが良い思い出。

オトナ帝国の試写で「こんな不愉快な映画は初めてだ」と言ったテレ朝映画部長のKが、二回目観たときに「良かったよ」と手のひらを返してきた(怒)(※)
(※筆者註:このエピソードは、シネマスコーレの原恵一映画祭のときでも話されていて、そのときは名前を伏せていたのですが、今回は実名を明かしていてビックリしました(笑)

■アニメ作品の中で一番良いと思う作品
アニメというより、すべての映画作品においても素晴らしいと思うのは『風の谷のナウシカ』。宮崎駿さんを始めとするあの世代の人たちが作り上げたことで、今の日本アニメが世界的に評価されているのだと思う。

■杉浦日向子さんの作品から影響を受けたシーン
ここではその代表例として、『戦国大合戦』で廉姫が白木蓮の落ちる光景を目の当たりにするシーンと、『河童のクゥ』で東京タワーの上空に龍が現れるシーンが流されました。

『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ! 戦国大合戦』より
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『河童のクゥと夏休み』より
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白木蓮の落ちるシーンは『百日紅』の一編「鬼」の丸パクリ(笑)
『河童のクゥ』の龍が現れるシーンは、杉浦作品と出会わなければたぶん出すことはなかったんじゃないかと思う。

■アニメ演出を仕事するにあたって大切にすべきことは
自分のダメな部分を大事にするところだと思う。僕らみたいな仕事では、自分の欠点が逆に個性になるところがある。自分は何をするにもノロくて判断するのも遅い。でもだからこそ、人と違う何かを生むことができる。変に短所を矯正したりせずに、むしろそれを活かしていったほうがいいと思う。これは社会人にとっても大事なことだと思う。

■チームで作品を作るときに大事にしていること
商業作品を作るにおいてはバランス感覚が必要。自分のやりたいことと、お金を出す人・スタッフの思いと、どうつり合いをとっていくのかが重要。作りたいものを作るだけでは商業作品は目指せない。それは宮崎駿さんも一緒だと思う。
商業作品を作るにあたって、外圧は必ずある。そこをどう捉えるか。それがあることで思ってもみないアイデアが出ることもある。

そしてトークの最後では、原監督の今後についても少しだけ触れられました。次回作もアニメ映画を手がけるとのことでしたが、「そろそろ自分も稼げるようにならないとヤバイので、次回は魂を売り渡すことになるかもしれない」と意味深なコメントを残してトークを締めてくれました。もちろん、『百日紅~Miss HOKUSAI~』の入り次第で今後も変わってくるのでしょうが、原監督が悪魔に魂を売るようなことにならないように、皆さん是非とも『百日紅~Miss HOKUSAI~』を劇場で観に行きましょう。どうかよろしくお願いいたします。

というわけで、面白いエピソードあり、ためになるお話もありと、およそ3時間にもわたる非常に内容の濃いトークでした。イベント終了後、原監督とお話しできないかと機会を伺ったのですが、あいにく取り込み中だったのと、時間が遅くなってしまったというのもあって、それは叶いませんでした。しかし帰りしな、舞台袖の楽屋にいた原監督が、自分に気づいて手を振ってくれたのは本当に嬉しかったです。これには、私は恐縮してしまって、ただただお礼を言いながらお辞儀をするばかりでした。大変お忙しい中、大阪まで来ていただいて本当にありがとうございました!
『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』の公開、楽しみにしております!

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【イベント情報】
5月5日(火)に、徳島のufotable cinemaで『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』の先行上映会と原監督のトークショーが開催されることになりました。一足早く劇場で観られる絶好の機会です。イベントへの参加には、当日配布される整理券が必要になります。詳しくはマチアソビ公式サイトをご覧ください。
ちなみに筆者もこちらに参加する予定でいます。整理券取れればいいけど…。

マチ★アソビ vol.14 2015.05.03~05.05開催

posted by チューシン倉 at 17:03| Comment(1) | TrackBack(0) | イベント | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
チューシン倉様
いつもイベントの情報を更新して頂きありがとうございます。
とても興味深いお話ばかりで興奮しました。
私は、公開初日の舞台挨拶に参加予定ですが、関東圏での原監督の単独イベントの開催を心待ちにしております。
どこかでチューシン倉様ともお会いできれば嬉しいです。
Posted by メープル at 2015年05月05日 05:42
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