2015年11月08日

ASIAGRAPH2015 授賞記念シンポジウムに行ってきました。

原恵一監督が、先月「ASIAGRAPH(アジアグラフ)2015」の創(つむぎ)賞を受賞しました。この賞は毎年秋に行われるデジタルアートの総合展示イベント「ASIAGRAPH」にあわせて、アジアのコンテンツ技術の発展に貢献した人に贈られるもので、今回『百日紅』における実績が高く評価されたことで今回の受賞となりました。原監督おめでとうございます。

原恵一監督 ASIAGRAPH 2015 創賞を受賞 10月24日に記念シンポジウム | アニメ!アニメ!

この受賞記念として「アジアから世界へ ~アニメとアンドロイドの未来~」と題したシンポジウムが、先日10月24日に日本科学未来館で行われ、私も参加してまいりました。

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このシンポジウムに登壇されたのは、原監督のほか、匠賞を受賞された、アンドロイドロボットの研究者として知られる石黒浩大阪大学教授、そして司会として東京大学大学院の教授でありアーティストの河口洋一郎さんが登壇されました。

シンポジウムの前には授賞式が執り行われ、原監督に創賞の賞状が手渡されました。賞を受けて原監督は「本日はこのような賞をいただいて光栄に思います。アニメの世界に入って33年、決して世界を目指して作っていたわけではなく、記録メディアもない時代からずっとやってきて、1回オンエアされたらそれきりという時代をずっと過ごしてきて、それが今や日本のアニメは世界から支持を集めている。これはいきなりこうなったのではなく、昔からの先輩たちの地道な積み重ねがあったからこそ今があると思っています。」(※筆者要約)と、受賞の喜びと、業界の先人たちへの敬意を込めた受賞コメントを寄せられました。

授賞式終了後、そのまま記念シンポジウムへと移りましたが・・・
そこで用意されていた原監督のネームプレートが「原健二」となっていて、スタッフが慌ててプレートを引っ込める場面が。
自分のネームプレートを見た原監督も困惑のご様子でした…。

シンポジウムは、まず原監督・石黒教授それぞれの仕事の紹介から始められました。『百日紅』のBlu-ray発売告知の映像がかけられたのち、司会の河口さんが原監督に質問する形でトークが進められました。まず、『百日紅』を作った経緯や面白さについて聞かれ、原監督は、もともと杉浦日向子さんの漫画作品が好きでいつかは映像化したいと思っていたことや、Production I.Gの石川社長から『百日紅』の企画を持ちかけられたことを話されました。河口さんは『百日紅』をご覧になったそうで、ハリウッドのアニメ作品とは根本的に違うコンセプトで作られていることに惹かれたそうです。原監督は、葛飾北斎の世界的知名度から世界で見られることも意識されたそうで、それには人の手で描くアニメーションが一番大事だと考えました。それこそが日本のアニメの力であり、他の国では絶対作れない作品になっていると語っていました。

また、お栄や北斎の描いていた浮世絵について、分業で作られていたところや庶民が喜ぶものを作るという点において、今のアニメ作りにも似ているところがあると、興味深い話もしてくれました。

一方、石黒教授からは、ご自身が手がけているアンドロイドロボットの研究について話されました。石黒教授は、たびたび自分のアンドロイドを海外に派遣し、ご自身は国内からネット回線を通じて講演をされるという、非常にユニークで新しい試みをされているそうです。アンドロイドを国外へ持ち出す際に、空港のセキュリティをどうやってクリアするのかが悩みの種だとか(笑)

最近では、バラエティ番組の『マツコとマツコ』に登場するマツコロイドも手がけた石黒教授。番組自体は大好評でしたが、残念ながら番組は9月をもって終了。制作費の都合上、半年以上続けるのは無理だったそうで。番組自体は決して「やらせ」はさせずに、ガチンコで実験させるというコンセプトで行っていたのだそうです。石黒教授のアンドロイドに対する並々ならぬ思いを強く感じました。

そのあと、河口さんから「アニメ監督になるための秘訣は?」と聞かれた原監督。これに対し原監督は「いい人は監督になれない」と答えました。どこかで非情だったり、非常識なところがないと監督はできないと。それはスタッフに対してというよりは、自分に対して非情になるということで、ただ自分の描きたいものだけを描けばいいというものではなく、ときには泣く泣く切らなければならないところがあると言います。原監督自身も、監督らしい監督にはなりたいけど、まだまだ自分は監督らしくないところもあると、自戒の意も込めて話されていました。

一方、同様の質問をされた石黒教授は、「人と同じことをやらない」と答えました。常識のかたまりが集まってもろくなものは作れないと。こういう世界は100社立ち上がって1社しか残らないギャンブルのような世界。ギャンブラーを育てる気で「子育て」しないとできないことだと、業界の厳しさを交えつつ、ユニークな語り口で話されました。

トークの終盤のほうで、今後の展望について聞かれた原監督は「職業上の夢はだいぶ叶ってしまったので、正直今は考えづらい」と、次回作の動きについてはまだまだ不透明な様子。そんな原監督に、河口さんは「ぜひ原監督に50億ぐらい出して新作作ってもらいましょう」と観客に呼びかけていたのが印象的でした(笑)

登壇されたお三方それぞれの口から、とても興味深いお話が聞け、新しい発見もできたシンポジウムでした。原監督、河口さん、石黒教授ありがとうございました。

さて、この翌日には、また原監督のイベントが都内で行われたのですが、それについてはまた後日お伝えします。

【追記】
シンポジウムの模様はUstreamでアーカイブ配信されています。
ご興味のある方はぜひ。
Ustream.tv: ユーザー DCEXPOTV: ASIAGRAPH2015 創(つむぎ)賞・匠(たくみ)賞授賞記念シンポジウム 「アジアから世界へ ~アニメとアンドロイドの未来~」
posted by チューシン倉 at 23:22| Comment(0) | TrackBack(0) | イベント | 更新情報をチェックする
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