2015年12月12日

NHK文化センター原恵一監督×藤津亮太さん対談講演に行ってきました

先日11月29日(日)にNHK文化センターの青山教室にて、原恵一監督と、アニメ評論家として知られる藤津亮太さんの対談講演が開かれ、行ってきました。

藤津さんは、たびたびインタビュアーとして、これまでもオーディオコメンタリーなどで原監督にインタビューされており、今回の『百日紅』にも絵コンテ集やオーディオコメンタリーなどで関わっております。これまでのインタビューからは聞き出せなかったお話も聞けるかと思い、今回参加することにしたのでした。



まず、藤津さんから、『百日紅』が世界各国の映画祭で受賞されていることについての感想を聞かれ、原監督は「嬉しい」と思いながらも、賞を貰ったからといって次の作品にプラスになるわけではないと言い、また、アヌシーでの受賞は今回二度目だったのですが、そのときは『カラフル』で最初にもらったときよりも意識してしまって緊張してしまったのだそうです。しかも、今回は大所帯で参加し、そのうえ女性陣は着物を着て気合を入れていたので、さらに責任感が増してしまったのだとか(笑)

ファンタジア国際映画祭のときは、まるでロックフェスティバルに参加しているかのような雰囲気で、観客もすごいノリノリだったとか。そんな映画祭のオープニング上映に『百日紅』が選ばれ、原監督は不安になったそうですが、現地の観客のウケはよく、最後はスタンディングオベーションでホッとしたそうです。

そのあと『百日紅』を作ることになった経緯を話されたのち、原作漫画はオムニバス形式である作品を、どう映画にしていったのかの苦労が語られました。

原監督が『百日紅』の原作漫画を読んだ当時、単行本の最終話はお猶が登場する「野分」で、そのときの死の描写の鮮やかさに感動を覚えたそうです。それもあって、映画では姉妹の関係を描こうと「野分」をラストに持って行く構成にしたのでした。オリジナルの雪のシーンは、のちに発売された文庫本最終話の、雪の話から着想を得て脚本が作られたそうです。

映画を作るとなると、オリジナルの部分も入れなければならず、あまり原作から浮かないように作るのは大変だったといいます。また、原作の雰囲気を壊しているのではという恐怖で押しつぶされそうになり、途中で絵コンテが描けなくなってしまったそうです。原監督にとってもそれは初めての経験だったそうです。(※この経緯は、『百日紅』Blu-ray特典映像のドキュメンタリーでも触れられています。)

それでも、時間を置いたことによって次第に気力を取り戻していき、絵コンテの執筆を再開します。そして、お栄がお猶の絵を描く、映画オリジナルのシーンのところで、ようやく大丈夫と思えたのだそうです。

『カラフル』では、アニメーションらしい表現を使わずに描いていたのに対し、今作の『百日紅』ではアニメーションらしい表現を巧みに使った理由について、『はじまりのみち』で実写をやったことによる影響もあったようです。実写は実写でアニメではできないこともある一方、予算やスケジュールの制約も多く、そこでアニメーションの自由さを痛感したそうです。『百日紅』は華やかな作品にしたいという思いがあり、アニメーションらしさを追求した作品を目指したのでした。

『百日紅』には多くの上手いアニメーターが関わり、中でも火事のシーンでは、絵コンテの段階ではほとんど適当に描いていたものの、それをアニメーターが見事なシーンに仕上げてくれ、原監督は驚くと同時に、手描きのアニメーションの重要さを感じたそうです。

また、お栄がお猶のところへ駆け出していく30秒ほどのシーンでは、背景動画を使おうと思いつき、CGではなくアニメーターに描かせようと考えたといいます。ここは分業のきかないところで1人でやらざるを得ない作業を、幸い上手いアニメーター(※筆者註:『カラフル』で作画監督を務めた佐藤雅弘さん)が現れて、3ヶ月かけて描いてくれたそうです。
CGで作るのとは違う、シズル感の溢れる背景動画に原監督はとても満足されたそうです。

スタッフやキャストにも恵まれ、思った以上のものが作れたと言う原監督。そんな原監督の今後について藤津さんが聞くと、原監督は今は特に作りたいものがないというのが悩みといいます。長年の企画だった『河童のクゥ』も実現し、今回で尊敬する杉浦日向子さんの作品の映画化も実現し、たいていのことはできてしまったので、これからどうしたらいいのか悩まれているご様子でした。「そんな夢のない奴が監督やっていていいのか?」とも。また次の作品が見られるのは、ちょっと時間が必要かもしれませんね。

最後に質疑応答の時間が設けられ、聴講者からいくつか質問が出ました。主なものをここで記しておきます。

※以下、原監督の発言内容は筆者が要約してまとめたものになります。実際の発言内容とは異なる部分もあるかと思いますので、あらかじめご了承ください。

■原監督にとってライバルみたいな存在の人はいるのか?
そんなに強く意識している人はいない。同世代としては庵野秀明さんのことは気になる。だからといってヱヴァの劇場版を観るつもりはないけど。こういう仕事をしていると、他の人の作品を、演出家としてはいろんなところが気になってしまって、お客として観られなくなってしまう。それがこの仕事の良さでもあり、悪さでもあると思う。

■この間、映画秘宝のムックのインタビューでミリタリー映画をやってみたいと話されていたが、具体的にはどういう作品を作りたいのか。水島さんの『ガルパン』みたいに、仮想世界で戦車を登場させたりとかなのか。
映画秘宝はああいうノリの雑誌だから無責任なこと言えるので言っただけ(笑)
やるとなれば、第二次世界大戦を舞台にしてガッツリ作りたいと思う。仮想世界とかはあまり興味がない。

■絵コンテをうまく描くコツはあるのか。
それは説明のしようがない。絵コンテで全て映像のリズムとか性格が決まってしまう作業。自分の納得いくまで紙に向かうしかない。

■アニメと実写、今後どの方向に進みたいのか。
実写は自分は向いていないと思う。実写映画で求められるのは判断力とか決定力だと思う。一度やって、あとで考えさせてくれというのはできない。あと早起きが苦手(笑)
柔軟な直しがきくのがアニメの良さだと思う。


こうして90分にもわたる濃密なトークは終了しました。原監督の今作に対する思いや、絵コンテへのこだわりの強さを感じ、改めて『百日紅』に対する見方が変わったように思いました。

終了後、サイン会の機会が与えられ、私は先日発売されたばかりの『百日紅』の絵コンテ集に早速サインしてもらいました。

サインをもらう際、12月のシネマスコーレの原恵一映画祭にも行くということを伝え再会を約束しました。
原監督、本当にありがとうございました。また名古屋でお会いしましょう!

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posted by チューシン倉 at 17:28| Comment(0) | TrackBack(0) | イベント | 更新情報をチェックする
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