2015年12月23日

『百日紅』『恋人たち』コラボオールナイトに行ってきました

12月12日(土)にテアトル新宿で、『百日紅』と、現在絶賛公開中の『恋人たち』とのコラボオールナイトが行われました。

『恋人たち』は、『ハッシュ!』『ぐるりのこと。』などで知られる橋口亮輔監督の最新作で、通り魔に妻を殺され裁判のために奔走する男、同性愛者で完璧主義の弁護士、自分に関心を示さない夫と、そりの合わない姑との平凡な生活の中で、突如現れた男に心が揺れ動く主婦の、3人の群像劇を描いています。私はこの映画をすでに鑑賞したのですが、世の不条理さに翻弄されながらも、そんな中に希望を見出していこうとする橋口監督の懐の深さを感じさせる映画でとても感動しました。ぜひみなさんにも観ていただきたい映画だと思います。

その『恋人たち』と『百日紅』がコラボし、両作品の上映のほか、Blu-ray特典映像の『百日紅』メイキングの特別上映、さらに原恵一監督と橋口亮輔監督の対談が行われるという、なかなかお目にかかれない機会ということで参加してきました。

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まず始めに、原恵一監督と橋口亮輔監督のトークが行われました。トークの司会は、『百日紅』メイキングの監督を務めた富樫渉さんです。

原監督と橋口監督が初めて出会ったのは、2002年のヨコハマ映画祭のときで、原監督は東宝の人に誘われて映画祭に行ったのですが、そのときに橋口監督を紹介されたのがきっかけでした。

実は、橋口監督は元々『クレヨンしんちゃん』が好きで、自分の心の支えになっていたと言います。その頃、橋口監督は『ハッシュ!』を作って以降、うつになっており、また9.11テロが起きて世間も暗い空気に包まれ、悶々とした毎日を送っていたといいます。そんな中、たまたまテレビ版のしんちゃんで観たエピソードがしんちゃんを好きになったきっかけでした。

お話は西部劇で、平和な西部の町にならず者が攻めてくるという噂になり、住民は恐怖して大騒ぎしているところから始まります。これは当時のテロの影響による世相を反映したものだったのですが、そんな中住民たちに向けた町長の言葉が橋口監督の心に突き刺さったといいます。

町長「みなさん、私たちは、まず“恐い”ということに勝ちましょう!」

その当時、どんな政治家もコメンテーターも誰も言わなかった、勇気のある強い言葉を『クレヨンしんちゃん』で言ったことに橋口監督は大いに感動し、それ以来しんちゃんを毎週観るようになり、映画も全作品観たと言います。その後、前述のとおり原監督に会うことになり、その場で原監督からサインをもらったそうです。
そんな『クレヨンしんちゃん』への熱い想いを語る橋口監督の姿に親しみを覚え、とても印象深かったです。

橋口監督は『百日紅』をご覧になっており、原監督の人柄や誠実さがにじみ出ていると絶賛されてました。特に、お栄が妹のお猶に手をさすったりといったところの細かい仕草にも目を見張っていて、橋口監督の審美眼の鋭さには驚かされました。一方、原監督も『恋人たち』をご覧になったそうで、最近は他人の映画を観ないという原監督も、本当に観て良かったと絶賛されました。原監督もまた、『恋人たち』に橋口監督の人柄を感じ取り、セリフ回しの一つ一つに、橋口監督の凄さを思い知らされたそうです。

前作の『はじまりのみち』で初めて実写に挑戦した原監督でしたが、アニメーションと実写の違いに驚きや戸惑いを覚えることが多かったそうです。実写の場合は、アングルを決めてそれを役者が演じて撮影し、あとは監督がOKを出せば、それでもう絵が完成してしまうそのプロセスに、今までアニメでやってきたことが無意味に思えるくらい衝撃的だったといいます。そのために、アニメの現場に戻ってきたときはそのギャップに苦しんだといいます。

実際に実写の現場に入って、原監督は、実写の監督は親の死に目に会えないのは本当だということを思い知ったそうです。監督一人が抜けるだけでスケジュールが空いてしまい、制作が進まなくなるということに、原監督は恐ろしさすらも覚えたそうです。

監督は孤独な仕事とよく言われるが、孤独を感じるときはどんなときなのかという司会の富樫さんの質問に、原監督は「絵コンテを描くときが孤独」と語りました。絵コンテは建築現場で言うところの設計図なので、人物のちょっとした動きや間もそこで決まってしまうと言います。思いついたことはそこに全て書き込み、人には相談してはいけない部分だといいます。一方の橋口監督も、作品が完成するまでは常に孤独を感じているようで、監督は孤独じゃないとできない仕事であることは実写もアニメも同じのようです。ゆえに、スタッフたちに、なかなか自分の思いが伝わらないことも多く、苦労も多いことも伺えました。

トークの最後、原監督は『恋人たち』はぜひエンディングの最後まで見てほしいと語り、さらに、橋口監督とは同じ木下恵介監督のファンということもあって、ぜひ木下恵介監督の作品、特に『永遠の人』『日本の悲劇』は絶対見てほしいと、『百日紅』のことはそっちのけでアピールしていました。一方、橋口監督も『百日紅』は、胸がスッとして、江戸時代に行ったような気分になると、こちらも『恋人たち』のことよりも熱くアピールしてました。また、橋口監督はまだ原監督の話を聞き足りなかったようで、「もっと飲ませたら宮崎駿さんの噂がもっと聞ける(笑)」と名残惜しんでいた様子でした。宮崎駿さんの話は、また次の機会ということでw

そのあと『百日紅』のメイキングドキュメンタリーと本編、『恋人たち』の上映が行われました。メイキングはBlu-rayを買っていてすでに拝見していたのですが、イベントではなかなか見せることのない原監督の素顔が伺えたように思いました。制作現場の雰囲気もなかなかメリハリがあったように思います。

中でも衝撃的だったのは、Eパートのコンテが書けず、IGに半年近くも出られなかったということです。原作の良さを潰してしまうのではないかという不安に、そこまで追い詰められていたのかと驚きました。ちょうどその間『河童のクゥ』の上映会にも顔を出されていたので、あんなに元気そうに顔を出されていた裏で、こんなことになっていたのかと思うと、何とも言えない気分になりました。それでも、それを乗り越えてあの傑作を生み出したことには驚嘆するばかりです。

ちなみにこのメイキングのドキュメンタリーは、来月1月2日~7日まで愛知・刈谷劇場でも上映が予定されています。ご興味のある方はぜひご覧に行かれてはいかがでしょうか。

特集2015/12/26~2016/01/07 : 刈谷日劇 ブログ

原恵一・橋口亮輔という、現代日本映画界を代表する名匠二人の対談トークは、新鮮味のあふれる内容で本当に行ってよかったです。正直1時間ちょっとでは足りないように思いました。これはぜひとも第二弾をやってほしいですね。原監督・橋口監督、貴重なトークを本当にありがとうございました!

【参照記事】
橋口監督が原監督のことについて触れているコラムがこちらになります。
新連載!!映画監督 橋口亮輔のエッセイ!!橋口亮輔「まっすぐ」

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posted by チューシン倉 at 15:53| Comment(0) | TrackBack(0) | イベント | 更新情報をチェックする
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