2016年04月16日

B&B 橋口亮輔×原恵一 「映画とぼくたち」『まっすぐ』刊行記念トークイベント

実は今年初めてのブログ更新です。
今年も「原恵一監督を応援するブログ」をどうぞよろしくお願い申し上げます。

今現在、熊本で大きな地震が相次ぎ、犠牲になられた方のご冥福を謹んでお祈りするとともに、被災された方には謹んでお見舞い申し上げます。被災地の一日も早い復興をお祈りいたします。

さて、先日3月26日(土)、下北沢の書店「B&B」で、橋口亮輔監督(『恋人たち』)のエッセイ集『まっすぐ』の刊行記念イベントとして、橋口・原両監督のトークイベントが行われました。橋口監督と原監督が顔を揃えるのは、昨年12月にテアトル新宿で行われたコラボオールナイト以来。そのときのトークは本当に面白くてもっと聞きたいと思っていましたが、まさかこんなに早く二人のトークが再び聞けるとは嬉しい誤算でした。というわけでもちろん参加してきました。


今回のトークイベントは、司会は特に設けず、橋口監督が主導してフリートーク形式で行われました。橋口監督は意外にも饒舌な方で、軽やかな口調で次から次へと話を膨らませていて、終始楽しく聞けました。中にはここでは書けない話も飛び出したりして、聞いているこっちがヒヤヒヤさせられました(笑)

その中で興味深かった話をここで記していきます。

■アニメ業界に入ったきっかけ
橋口監督からアニメ業界に入ったきっかけを聞かれた原監督は、自分の学力では大学に入れないと思い、専門学校を調べて目を惹かれたのがアニメーションの専門学校だったと言います。元々絵を描くのが好きだったので、アニメーターになれればと思っていたのですが、全国から絵の上手い人たちが続々集まってきて、彼らのレベルの高さにアニメーターは無理だと思ったそうです。そんな専門学校時代に、原監督が生涯で最も多く映画を観ていたといいます。ぴあで東京のあちこちの名画座をチェックして、時には1日で3本立てを2回まわすなど、映画にのめり込んでいったそうです。映画を観ていくうちに、次第に映画監督に興味を持ち始め、やがてアニメの演出を目指そうと原監督は思ったのでした。その後、広告制作会社を経て、シンエイ動画に入り、制作進行や『ドラえもん』の演出助手を経て、『ドラえもん』で演出デビューするに至ります。

ちなみに、橋口監督は『エスパー魔美』や『河童のクゥ』もご覧になってたようで、『河童のクゥ』のラストシーンの、風が吹いた瞬間にクゥが涙をポロッと流す演出が素晴らしくリアリズムあふれていたと絶賛していました。

■東宝・島谷氏からゴジラのオファー。
現在東宝の社長を務める島谷能成氏から、両監督になんと『ゴジラ』のオファーがあったそうで。橋口監督は以前に、『渚のシンドバッド』(1995年)で島谷氏とご一緒に仕事されていて、その際「次は馬鹿な女子高生やOLを騙す映画を作るんだ」と話を持ちかけていたそうで(笑)
そんな島谷氏とは、先日映画賞の授賞式でご一緒だったようで、そのときにも「ゴジラやらない?儲けたらおごるで。」と朗らかな口調で橋口監督に持ちかけていたといいます。

一方、原監督は、当時映画調整部長だった島谷氏から東宝に呼び出され、そのときに初代ゴジラのDVDを渡され 『ゴジラ』の脚本執筆のオファーを受けたそうです。そのときの様子を、原監督は島谷氏の口調を真似て「原くん、ゴジラや」と再現していたのが面白かったです。しかし、当時シンエイの社員だったため、勝手にオファーを受けたことを会社から怒られ、また島谷氏のほうも始末書を書く羽目になってしまったとか。

原監督も島谷氏と先日授賞式でご一緒になり、そのときは「原さんもそろそろ派手な映画作ろうぜ」と社長になっても相変わらずだったようで。そんな人柄に、両監督とも苦笑いのご様子でした。

そこから『ゴジラ』映画の話題に及んで、毎回ゴジラ映画を観るたびに魂が抜けてしまい、この記憶をとどめておこうと絵に書き起こすも、こんなんじゃないと毎回怒ってしまったことや、『ゴジラの息子』を観てミイラのような息子の姿にガッカリしたというエピソードなど、原監督からゴジラに関するエピソードがたっぷり語られ、それを聞いた橋口監督は「それだけ好きなら、逆にやらないほうがいいのかも」「好きなのをやれたからといっていつも楽しいわけがない」と、ゴジラの仕事を請けることの難しさを漏らしていました。

■『百日紅』のアニメーターについて
『百日紅』終盤の背景動画のシーンは、一人のアニメーターに3ヶ月かけてやってもらうほど難易度の高いシーンでした。原監督曰く、映画には「監督ご乱心」みたいなシーンが欲しく、そういうのを入れないと、観客にも、スタッフにも印象に残らないと言います。それゆえ、スタッフからよく言われるのは「原さんはドSだなあ」ということ(笑)
それに対して原監督は「そういう君もドMだろ(笑)」と返しているようで、原監督とスタッフの間の信頼関係の強さを伺わせました。また、橋口監督は、最近のテレビアニメは、あまり絵が動いていないことを指摘し、自身が好きな『NARUTO』のTVアニメオリジナルエピソードの作画に不満を漏らす場面もありました。

原監督によれば、上手いアニメーターがいろんな作品から引っ張りだこの状態で、なかなか確保するのが難しい状況と言います。また、アニメーターも、決してギャラの高さで仕事を選んでいるわけではなく、自身がやりたいかどうかを基準に仕事を選んでおり、アニメーターの職人気質の強さを感じました。

■『恋人たち』について
橋口監督の『恋人たち』を見た原監督は、素直にすごい映画で、何の嘘もなく褒められる映画だったと大絶賛。特に、本筋とはあまり関係ない、何気ない場面での会話のやり取りが橋口監督の良さが一番出ていると原監督は褒めていました。いかにテーマが高尚なものであっても、何気ない場面で印象に残るものが映画を豊かにすると、その重要性を熱く語っていました。

また、原監督と橋口監督は、木下恵介監督の生誕100周年記念イベントで久々にご一緒し、そのときに聞かされた橋口監督のいろんなエピソードが、この『恋人たち』にそのまま反映されていてニンマリしてしまったようで。「殺したいやつ殺せた戦国時代がうらやましい」といった下りは、橋口監督が原監督に話した言葉そのままだとか。今も橋口監督は係争中のようですが、そんな中でも笑ってネタにできる性格の強さには驚かされるものがあります。(内心はまた違うのかもしれませんが…。)

■加瀬亮さんの演技について
原監督の『はじまりのみち』で主演を務めた加瀬亮さんは、橋口監督の作品にも出演されていました。加瀬さんは穏やかなようで、実はものすごく熱いタイプで、今の日本映画界に対して非常に危機感を持っているとか。橋口監督は『ハッシュ!』のときに、当時浅野忠信さんの付き人だった加瀬さんと初めてご一緒し、そのときは、なかなか監督の思うとおりに演じられず、最初は生意気な印象を持っていたのですが、実は加瀬さんは自分の中でちゃんと納得しないと演技ができないタイプの人間だとわかり、彼の演技に対するこだわりを感じ取ったそうです。

その後『ぐるりのこと。』で、連続幼女殺人事件の被告人役を演じてもらったのですが、そのときは、モデルとなった実在の被告人の人物像を、橋口監督は掴みきれず、よくわからないまま脚本を書いて演じてもらったそうです。そのとき加瀬さんは別の作品の役作りのために、自閉症の治療センターに行ったことがあり、そこで見た経験を活かして、被告人の演技に反映させたのだそうです。その加瀬さんのプロの迫真の演技に、橋口監督は圧倒され、自分の力で撮れたとは思えないと述懐していました。

■アニメーションと実写の違い(お金的なところ)
トークの最後のほうで、観客からの質疑応答の時間が設けられ、私も橋口監督に一つ質問させていただきました。それは、原監督が『はじまりのみち』で実写を撮ったのに対して、逆に橋口監督はアニメーションに何らかの形で関わりたいのかということ。これに対し橋口監督は、昔漫画家になりたくて漫画を描いていたということもあり、原作とかやれれば嬉しいと意欲満々のご様子。しかも「儲かるから」とも(笑)

そのあと、アニメ業界と映画界のギャラの話になり、原監督は『はじまりのみち』で撮影を終えても、なかなかギャラが入ってこなかったようで、製作中でもギャラが入ってきたアニメ業界のほうがまだ健全だと告白。橋口監督によれば、脚本が上がってからようやく脚本料が入るというのが、今の映画界の慣習となっていて、その間の収入はほとんど無いため自腹を要求されるのだそう。映画を作るには、それ相応の覚悟が必要だということを思い知らされました。

このほか、映画賞の授賞式でとんでもないことを話した、某大手映画配給会社の社長の話も飛び出しましたが、とてもここでは書けません(笑)
やっぱり儲けることしか考えてないんですかねえ…。

そしてトークショーが終了したあとは、橋口監督のサイン会が行われ、私もエッセイ集の『まっすぐ』を買ってサインしていただきました。


そのあと、橋口監督と原監督は、待ってましたとばかりに会場をあとにして、下北沢の街へ繰り出していったとさ。どこかの居酒屋で二人、楽しい映画トークを繰り広げていたことでしょう。

こうして待望だった両監督の再びのトークイベント。二時間にわたるお二人の濃密なトークは、ずっと聞いていて飽きませんでした。むしろ二時間では足りないくらい楽しく聞かせてもらいました。またお二人のいずれかが新作を公開したときにはトークショーやってほしいですね。何年後になるかはわかりませんが(笑)

橋口監督、原監督、楽しい一時をありがとうございました!

「まっすぐ」 (ele-king books) -
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posted by チューシン倉 at 22:44| Comment(0) | TrackBack(0) | イベント | 更新情報をチェックする
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